本研究の目的および平成9年度研究実施計画にもとづく調査研究は、波田重熙(神戸大学・大学教育センター・教授)の協力を得て、他地域(鹿児島県川内市〜宮之城)との比較を参考にしながら六甲山地を中心に行われた。とくに六甲山地については、新たに寒天山道とよばれる尾根においても本研究で問題とする地割れがあることが分かり、測量と礫の変位の確認調査を付け加えた。 平成9年度の研究成果として、六甲山地内で発見された3ケ所の尾根を横切る地割れは(学校林道、有馬湯槽谷山、寒天山道)は、いずれも推定水平加速度が1G(Gは重力加速度)前後と異常に大きく作用した地点であることが判明した。さらに、3ケ所の地割れは単に地震動によって形成されたものではなく、地盤に生じた推定加速度の大きさと方位の分布からテクトニックなものであり、地割れ形成に2つのプロセスがあることが判明した。すなわち、2つの異なる方向の力が作用して地割れが形成されるタイプ、と水平加速度の作用方向は同じであるが大きさが異なることによって形成されるタイプである。これらの成果は、「兵庫県南部地震に伴って六甲山地に出現した尾根を横切る地割れと地盤に作用した水平加速度の評価」と題する論文を地理学評論(日本地理学会)に投稿した。 本年度の研究で求めた推定水平加速度は現場の計測値を直接用いて算出したものであり、検定を行う必要がある。来年度は、今年度準備した振動実験装置を用いた水平加速度に関する実験結果と現地調査の結果をもとに六甲山地全域の水平加速度の推定と地形変化の特徴を、他地域との比較を通して、明らかにする。
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