本研究は、兵庫県南部地震に伴って六甲山地で生じた水平加速度を推定するとともに、このとき生じた斜面崩壊などの地形変状の特徴を明らかにすることを目的とした。 その結果、六甲山地およびその周辺において変位した巨礫・墓石の中座などの接触面の摩擦係数と傾斜角の計測値から算出した水平加速度をもとに作成した加速度分布図から、六甲山地においても1000ガル程度の水平加速度が作用した地点があることが判明した。この値は地震直後に報告された岩盤部分の値と比べて異常に大きく、地形の効果を示唆しているものと解釈した。地形変状に関しては、土砂生産の有無という点からみると、土砂生産を伴う斜面崩壊などと、それを伴ない地割れ現象などに区分されることが分った。このうち地震によっても岩屑斜面が形成されこと、斜面崩壊は推定水平加速度の46億程程度で、その密度(個数/km^2)が増加することも分った。一方、地震に伴って形成された地割れのなかには尾根を切る地割れが存在することが判明し、六甲山地内では3ヶ所の存在が確認された。これら3ヶ所の地割れは、いずれも推定水平加速度が1000ガル程度を示す地点に存在し、地割れ周辺の水平加速度の作用方向と併せて検討した結果、いずれも地上りに伴うものではなく、テクトニックなものである可能性があることを指摘した。
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