本研究は、兵庫県南部地震に伴って六甲山地で生じた水平加速度を推定するとともに、このとき生じた斜面崩壊などの地形変状の特徴を明らかにすることを目的とした。その結果、六甲山地およびその周辺において変位した巨礫・墓石の中座などの接触面の摩擦係数、傾斜角の測定値から算出した推定水平加速度分布によると、六甲山地においても1G(=980ガル)程度の水平加速度が作用した地点があることが判明した。この値は直後に報告された岩盤部分の値に比べて異常に大きく、地形の効果を示しているものと解釈した。地形変状に関しては、土砂生産という観点から、土砂生産を伴う斜面崩壊などと、それを伴ない割れ現象などに区分されることが分かった。このうち、地震によって生じた崩壊地の特徴としては、その多くがテイラス斜面あるいはクリッター斜面を伴っており、林地内で生じた小崖の崩壊と併せて、地震による岩肩斜面の形成が重要であることを明らかにした。一方、地震に伴って形成された地割れなかには尾根を横切る地割れがあることが判明し、六甲山地では3ヶ所の存在が確認された。これら3ケ所の地割れは、いずれも推定水平加速度が1G程度を示す地点に存在し、地割れ周辺の水平加速度の作用方向などから吟味した結果、いずれの地割れもテクトニックなものである可能性があることが判明した。
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