研究概要 |
1)岩石氷河の形態を明らかにするための,空中写真による大縮尺地形図(1:2000)を昨年度に引き続いて作成した. 2)内部に氷体あるいは永久凍土が存在するかどうかについて明らかにするため,地温センサー・記録計・積雪深計を立山内蔵助カール,穂高岳中岳の岩石氷河に設置し,一年間観測を継続した.さらに,立山内蔵助カールおよび白馬岳杓子北カールの岩石氷河上で電気探査をおこなった.内蔵助カールではピット掘削によって地温を実測し,永久凍土が存在することを明らかにした. 3)飛騨山脈の野口五郎岳,黒部五郎岳,立山内蔵助カール,穂高岳中岳・天狗原・大きれっとカール,薬師岳東面カール,野口五郎岳,黒部五郎岳,赤石山脈の三峰岳,北海道の大雪山系忠別岳,日高山脈幌尻岳などで,岩石氷河の目録を作成した. 4)研究分担者の松岡は,スイス・アルプスの岩石氷河および周氷河地形の調査をおこなった.その結果,それらの地域における岩石氷河の分布と永久凍土との分布との関係が明らかになった. 5)研究代表者の岩田は,日本列島の岩石氷河は,その形成時代と内部の凍結状態によって3タイプに区分できることを明らかにした.1)1万年前前後の晩氷期に形成された化石型.2)数百年前から150年くらい前までの小氷期に形成された化石型.3)数百年前から150年くらい前までの小氷期に形成された停滞型である.このことから日本の高山帯にはかつて広範囲に永久凍土が存在していたことが明らかになった.
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