本年度は研究課題の一つとして夏季を中心に現地における群落調査ならびに気候環境調査を行った。特に調査地域に分布する階段状微地形が群落の発達にどのように関わるのかが検討された。このような微地形の成因は周氷河性である可能性が高いと思われるが、流水による可能性も捨てきれていない。このいずれかによって群落は形成されつつあ本姿であるのか、破壊された姿であるのか、すなわち、一次遷移途上か、二次遷移途上かが決まり、その判定は群落そのものの動向に大きく関わることになる。この判定のためには堆積物の内容のほか、凍結融解の頻度なども重要な情報となる。従って、昨年来継続中の通年気象観測は貴重なデータを提供する。現在までのデータで確認する限り、凍結融解期間は意外と短く、周氷河作用の比重はさほど大きくない。さらに正確さを期すため、現在なお観測を継続しており、土壌の攪乱・移動に関する調査も続行中である。 米軍・国土地理院・林野庁によってのべ11回にわたって撮影された空中写真を入手し、樹木限界の変動と亜高山帯林分への様々な攪乱の実態を明らかにすべく、解析を開始した。その結果、雪代による攪乱を明瞭に捉えることができた。 富士吉田市歴史民族博物館所蔵の富士山明細図、富士山の絵札、富士吉田市史資料叢書などを入手した。現在、これらを用いた植生変遷解明の可能性を検討中である。
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