日本の河川では、巨大ダムや護岸工がほとんど建設されていなかった明治時代における大河川の流路形態は自然状態に近いものであったと考えられる。そこで、その後のダム建設や河川改修に伴う谷口から下流の流路形態の時空的変化を、日本全国の34河川を対象として、明治時代以降に4〜9回も発行された新旧の5万分の1地形図を基図とする地形計測によって、谷口から加工までの河川網状度および河川屈曲度の時空的変化で定量的に評価した。流路形態に基づいて、河成堆積低地を扇状地形、均整型および非均整型に三大別し、それぞれの低地における流路形態の変化傾向を把握した。また4河川(最上川、九頭竜川、揖斐川、吉野川)の谷口から下流の河床堆積物の粒径および円形度を計測した。本研究で得られた新知見は次のように要約される。 1.明治時代の網状度の最大値は、どの河川でも河床勾配が約1×10^<-3>の地区に出現し、それより急勾配および緩勾配の地区では急減していた。その「しきい値」は、河床堆積物の平均粒径が礫から砂に急減する扇端部の河床勾配に一致する。2.現在の網状度の最大値は、明治時代のそれよりも、扇状地形では著しく増加し、かつ河床勾配が約3×10^<-3>と急勾配の扇央部に出現する。一方、均整型では網状度の最大値は著しく減少しているのに、最大値の出現する河床勾配は約1××10^<-3>であって変化していない。3.人工的な堰の上流側で網状度が急増したが、蛇行原では堰の影響は少ない。4.河川の屈曲度の最大値が出現する河床勾配は1××10^<-3>〜1××10^<-4>である。この河床勾配はミシシッピー川の場合よりもほぼ一桁大きい。以上の変化傾向は、明治時代以降のける大規模なダム建設と河川改修を反映していると解される。
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