研究概要 |
本年度は,タフォニの形成に関わると予想される条件(タフォニ凸部および凹部の表面・10cm深温度,タフォニ凹部の表面変位量,水分量,気温)の通年観測,斜面へのペンキ塗布による剥離量測定,およびX線粉末回折による試料の鉱物分析などを中心に,宮城県鳴瀬町および千葉県鋸南町の海岸部において研究を進めた.観測は現在も継続中であるため,本報告は中間報告である. 1.鳴瀬町タフォニ 当該タフォニは,凝灰岩からなる海食崖で囲まれる小島に発達し,観測地点は卓越風があたる北西に面する.ここでは,先述した条件をデータロガーを用いて10分間隔で観測している.観測は平成9年9月27日に開始し,平成10年2月18日に日射計,風向・風速計を追加するため一時中断した.これまでの観測結果によると,タフォニ凹部の温度変化は,表面・10cm深ともに凸部に比べて小さく,表面部では降雨によると思われる変位が認められた.一方,風下側に位置する剥離量測定面では,寒候期に塩類の析出が認められ,暖候期に塗布したペンキも剥がれていた.これらから,タフォニの形成は風食,乾湿風化,塩類風化など様々なプロセスが関与していることが推測された. 2.鋸南町タフォニ このタフォニは,千畑礫岩層および天津泥岩層で構成される南面する海食崖に発達する.千畑礫岩層に発達するタフォニは凸部が礫岩部,凹部がシルト部に対応し,凹部ではおもにシルトからなる剥離片が認められた.一方,天津泥岩層のタフォニは,表面に塩類の析出が認められ,それらはX線粉末回折によりhaliteと同定された.これらの点は,タフォニの形成が,乾湿風化や塩類風化に起因することを推測させた.
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