研究概要 |
本年度は昨年度から実施しているタフォニの形成過程にかかわる条件(タフォニ凸部および凹部の表面・10cm深温度,凹部表面の変位量,水分量,気温,日射量,風向風速,湿度)の野外モニタリングを,宮城県鳴瀬町の海岸部に発達するタフォニにおいて継続測定した.また,タフォニ凹部壁面における剥離量および表面水分の測定,壁面析出物質のX線粉末回折分析,風送塩の捕獲調査などを実施した.これらの結果,次のようなことが明らかとなった. 1. タフォニ凹部壁面における剥離量(剥離面積)の測定から,剥離物質の生産は暖候期より寒候期にやや多く認められることがわかった.剥離量をもとに研究対象としたタフォニの形成期間を推定したところ,およそ320〜1400年となった.また,タフォニの深さ方向の発達速度は,0.23〜1.04mm/yearと推定された. 2. タフォニの形成過程に関わる条件のモニタリングから,剥離物質の生産が多い寒候期は,相対湿度が約70%まで低下し,凹部の表面〜10cm深までの水分量も低下した乾燥時期であることが明らかとなった.この寒候期におけるタフォニ凹部,凸部の表面および10cm深の温度は,0℃を下回るが,表面部の水分量は凍結破砕作用を引き起こすに十分なものではないと考えられる. 3. タフォニの壁面では,寒候期に塩類の析出が認められた.この析出物をX線粉末回折で分析した結果,ジプサムとプレーダイトと同定された.これらの塩類は寒候期の湿度低下と岩石表面部の水分量低下に伴って生じたと考えられる.塩類の供給源は,タフォニが飛沫帯に位置することから海水の飛沫もしくは風送塩によると推定される.
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