今年度はアマチュア衛星を大学の理工系学部および工業高等専門学校における科学教育あるいは工学教育に活用するため、主に以下の2つの項目に関して研究を行った。研究成果は4回の学会講演と3件の学術論文で公表した(2件の講演と1件の論文は平成11年7月までに発表予定)。また、試作した実験教材などはインターネットのWeb上で入手できるようにデータベース化した。 1. 標識電波のドップラー効果の観測 人工衛星が送信するVHF帯およびUHF帯の標識電波を受信しドップラーシフトの時間変化を測定することにより、人工衛星の速さや最接近時のスラントレンジを求める学生実験(実験装置、実験方法、実験テキスト)を考案し、研究代表者が所属する高専・専攻科の電子情報工学特別実験において実施してその教育効果を評価した。 2. テレメトリ・ホールオービットデータの取得と解析 MicrosatおよびUoSATと呼ばれる人工衛星のテレメトリを受信し解析することより、人工衛星の運動状態、人工衛星に搭載されている機器の動作情況および人工衛星を取り巻く宇宙環境を考察・評価する学生実験(実験装置、実験方法、実験テキスト)を考案し、高専・専攻科の特別実験において実施してその教育効果を評価した。また、UoSAT-2と呼ばれる人工衛星が送信するホールオービットデータを取得するための学生実験用デモジュレータを開発した。ホールオービットデータに含まれる太陽電池の出力電流や表面温度、地磁気の長期間にわたる観測データを観測・蓄稍し、太陽の活動、人工衛星の軌道および地磁気の変動を考察する実験教材を作成した。
|