コンピュータを活用した学習は個別化し、操作過程や学習過程は学習者ごとに異なる。学習者はコンピュータとの対話の中で状況を認知し処理方略を立てて学習を展開していく。従って、情報教育においては学習履歴を追跡し学習者の個人特性を明らかにしていく必要がある。これまで非反応測定法により学習履歴を分析してきたが、本研究はさらに学習者の発話やインタビューの発言を収集し二つの情報を統合し学習者の情報活用過程における状況認知と処理過程を解明することを研究目的とした。情報活用過程はワードプロセッサの活用時及びプログラミングを対象とし状況認知と処理方略を解明した。ワードプロセッサの活用に関しては文書作成、文書修正、他者の文書入力のモニタリングにおける状況認知と処理方略を明らかにした。またプログラミングに関してはプログラム作成、プログラムの修正、他者のプログラミングのモニタリングにおける状況認知と処理方略を明らかにした。状況認知はNorman D.A.の7段階モデルを援用し、学習者特性の一部が解明できた。本研究は中学生の被験者を対象にし教育実践の中で実験を行ったが、生徒は学習段階でさまざまな状況に出会い、そこで解決方略を獲得しており、上記の処理過程において既に見につけた問題解決のスキーマ及びスキルによって状況を認知し処理方略をたてていることがわかった。作成段階ではメタ認知が働いており自己のモニタリングとコントロールが機能している。また、他者の作成した文書やプログラムを修正させたり、モニタリングさせて誤りの気付きや指摘を分析したが、生徒固有の特性が明らかになった。個々の生徒の認知面の解明に本研究の方法が有効に機能した。
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