学期末に行われる「学生による授業評価」は、「次の学期の授業改善」の資料としては有効であるが、「次週の授業改善」の資料としては機能しない。こういった発想のもとに本研究では、「次週の授業改善」を促す「学生から授業担当者への授業改善のためのフィードバック情報」を収集する方法として開発された大福帳(開発者:織田<研究代表者>)の効果的な実践法や大福帳の受講生に及ぼす効果(大福帳効果)に関する検証が試みられた。大福帳とは、14回分(片面7回)の授業に対する受講生の意見や感想などを記入する「学生用欄」、教師からの学生へのコメントを記入する「教師用欄」が印刷されたカード(大福帳、A4判の厚紙)である。受講生は授業開始前に自分の大福帳を受け取り、その日の授業の感想や意見等を記入して、退室時に提出する。授業担当者は、次週までに、学生の記述に対して短いコメントを朱書する。この繰り返しを1学期間行う。 本年度(初年度)は、次のような研究と教育実践が行われた。 1)大福帳を導入した授業実践と大福帳に対する受講生の態度変容、および、大福帳の受講生に及ぼす効果(大福帳効果)の分析:織田の担当する授業「教育心理学」に大福帳を導入し、大福帳に対する受講生の態度変化に関するデータが収集・分析された。この研究成果の一部が、1997年度の日本科学教育学会第21回年会と日本教育工学関連学協会連合第5回全国大会で口頭発表され、また、三重大学教育実践研究指導センター紀要第18号に発表(発行1998.3)された。 2)我が国の大学ににおける「学生による授業評価」の実施状況と「学生による授業評価項目の収集・分析」、および、「学生による授業評価」に対する授業担当者による意見・評価等についてWWWに公開された資料が収集され、現在、その分析が行われている。
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