近年、「学生による授業評価」を実施する大学数が急増している。しかし、「自分の授業はどこが優れており」 「どこに改善の余地があるか」 「どのように改善すればよいか」といった授業改善を目指す教官の疑問や相談に応え、支援する相談機関を設置する大学はほとんどない。 本研究の目的は、研究代表者が開発した「受講生の力」を借りて授業改善を支援する「大福帳(授業改善システム)」の有効性・実用性を検証することである。具体的には、大福帳の授業導入に対する受講生の態度、大福帳導入効果(大福帳効果)、大福帳導入に対する受講生の態度変容等が授業実践を通して検証された。 「大福帳導入に対する意見調査」 「学生による授業評価」、リポート課題「大福帳導入の効果についてのべよ」等が、大福帳効果の検証データとして用いられた。分析の結果、大福帳導入は「学生による授業評価」を高めること、また、(1)授業出席促進効果・欠席防止効果、(2)積極的受講態度形成効果、(3)信頼関係形成効果、(4)授業内容理解・定着促進効果、(5)自己変容過程確認効果等の大福帳効果が確認された。学期はじめには、大福帳導入に対する拒否反応が現れるが、教師からの朱書(アイ・メッセージ)が毎回、授業はじめに学生にフィードバックされること、大福帳に何を書いてもよいこと、大福帳を成績評価の対象にしないことなどの理由から、大福帳への拒否感情が好意的な感情に変化することが実証された。また、学期末の調査で「大福帳の導入は授業の充実に役立った」と評価する学生は97%であった。 「大福帳」は授業のたびに実施される「形成的評価法」を活用した授業改善システムであり、学生と教官の交流をべースにした実用性の高い「学生とともに行う授業改善システム」であることが証明された。
|