コンピュータネットワークを利用して、複数の学習者が討論形式で学習を行う場合の支援方法について研究を行った。伝送する情報の種類と学習者の討論に対する集中度の関係を実験により調査し、さらに討論内容をいくつかの視点から可視化する機能を持った共同学習ツールを提案した。また、討論者エージェントを導入することによって、討論を誘発する方法を提案し、さらに、議長機能の自動化を実現した。 伝送情報と学習者の態度の関係においては、参加者の表情伝送の有無、リモコンカメラ操作による視線の動きのフィードバックの有無、討論資料の共有場の有無が学習者に与える影響について調査した。その結果、観察される側にモニターを設置し、相手の視線の動きをフィードバックすることで、相手の存在感が大きく高まることがわかった。また、双方からアクセス可能な討論資料の共有場が円滑に討論を進める上で重要であることが確認された。 討論による学習においては他者との相互作用によって話題の対象に対する理解が深まると期待されるが、それには、自己と他者の立場や意見、グループ全体の議論の展開を、的確に把握できることが必要である。また、討論終了後に、各人の意見の変化、その変化が何によって引き起こされたか等を、反省的に思考することで、議論スキルの向上を期待することもできる。このような学習を支援することを目的として、討論内容の静的構造と時間にそった流れ、各人の発言内容、立場の変化などを可視化して示す機能を備えた討論支援システムを構築し、アンケート調査により有効性を確認した。 さらに、疑似討論者エージェントを導入することで討論を誘発する方法を提案し、さらに、議長機能を自動化した。疑似討論者は討論の内容は埋解しないが、討論支援ツールから発言間の関係を知る。この関係を利用して、発言の少ない学習者を討論に誘導し、また、埋没したい意見を話題とする方法を提案した。
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