多様な学習者への対応を考慮に入れたコースウェアの設計・開発に際しては、学習者のモデリングと教材構造の設計は不可分な関係にある。本研究における成果の一つとして、多様な学習者への対応を考慮に入れたWWWベースでの教育支援システムの一構成法を確立したことが挙げられる。すなわち、コースウェア教材をWWWサーバで管理・運営する枠組みとなっているため、従来より研究を進めいていた学習者のモデル化を行うための情報源としてアクセスログ活用を明確化している。さらに、コースウェア学習における典型的な教材提示パターンの洗い出しを行い、コースウェア記述ノード、学習フロー、エレメント、分岐、補足、応用、事後確認、事前確認、ブロック、選択を構成要素とするダイアグラムを定義した。ただし、コースウェアのアウトライン構成は木構造を仮定しており、各学習ノードを構成する教材要素群に対してのみ、多様な学習者への対応が可能な枠組みを提供したに留まっている。しかしながら、汎用的なオーサリングツールの実現へ向けて、具体的なダイアグラムを提案して枠組みを確立したことは、本研究の大きな成果であると考えられる。なお、インターネット関連の技術的進歩の早さの影響などから、最終的に開発環境を固定した実装に基づく評価までには至らなかった。さらに最終年度半ばにおいてXMLの利用環境が整い始めたことから、それを利用した教材管理への枠組み的な対応が今後の研究の発展に極めて重要であると判断し、設計変更が引き続き進められている。XMLの利用は、教材構造表現に独自のタグを定義・利用することができるため、教材の相互利用に関して柔軟性が高まるとともに、教材選択機構の実装などにおいては、タグを手がかりとした処理が可能となるなどメリットが大きく、今後の実装評価が期待される。
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