本研究は、国際理解教育を総合的な学習として展開するために、日本ではまだ教材の少ないアフリカについて、単に地誌だけではなく、自然と人々の生活様式、伝統文化と近代化の拮抗、直面している諸問題などを含めて、多角的に理解を深めるための教材キットを作成することにある。 多様なアフリカの中から地理的、文化的、歴史的な背景および今日直面している諸問題の特色を考慮して、具体的にはケニア、南アフリカ、セネガルをとりあげて資料・情報を収集、整理、分析し、基礎的データを作成した。その結果、ケニア・南アフリカ・セネガルの3地域で、次のような主眼のもとに教材を構成することとした。 ケニアは、気象条件に左右される食糧生産と、国際価格の動向に支配される一次産品輸出に依存する脆弱生を克服しておらず、財政収支の悪化、対外債務の増大、年平均4%に及ぶ人口増加といった問題を抱えている。とくに、外貨獲得の大きな部分を占める観光開発に焦点をあて、社会開発における意義と人々の暮らしに見られる文化変容について思考を深めることに主眼をおく。 南アフリカ共和国は、長年にわたるアパルトヘイト政策が1991年に廃止され、民主国家への道を進みつつあるが、白人と非白人の間の経済的な格差は大きく、複雑な民族構成を反映して種々の社会問題も深刻である。反アパルトヘイト闘争の歴史を踏まえながら人種主義克服への方策を追究する。 セネガルは、フランス植民地時代からの落花生生産による農業が中心であるが、旱魃や一次産品価格の暴落により、財政赤字、国際収支赤字に直面している。全人口の90%以上がイスラム教徒で、人々の生活にもイスラム文化が深く浸透している。生活と宗教とのかかわりについて考えることに主眼をおく。 平成10年度は、衣服、民具、装飾品、音楽などのモノ教材も組み込んで、これらの地域を対象とする指導案を構成し、その成果を発表する予定である。
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