まず、総合学習のカリキュラム構成を「教科ベース型」「テーマベース型」「関心ベース型」の3つ分けて論じ、本研究では「テーマベース型」の教材を開発した。アフリカをテーマとしてとりあげたのは、二つの理由からである。第一にCEPS調査研究結集にもづいて21世紀に必要とされる市民的資質のうち、とくに「諸問題へのグローバルなアプローチ」「異文化に対する理解と寛容」「批判的思考」を育成することをおもなねらいとした。第二に、とくにサブサハラ地域は貧困、紛争、難民環境破壊など深刻な諸問題に直面し、先進工業諸国による援助協力の重点地域となっており、日本のODAもこの地域への協力を増大しつつある。が、日本ではアフリカに関する教材は極端に少ない。本研究では、授業展開例と指導用資料を作成しさらにスライド、民族楽器、音楽テープ、民族衣装生活用具なども実物教材として準備し、希望者には貸出を行う。 本研究では、野性動物を資源として観光を基幹産業としているケニア、暮らしのなかにイスラム教が定着しているセネガル、教育開発に力を入れているザンビアの3つの国を事例とした。いずれにおいてもサブサハラの抱える諸問題だけではなく、人々の生活や文化を積極的にとりあげた。深刻な暗い側面だけではなく異なる文化を理解することのおもしろさにも目を向けてほしいからである。また、3つの国を通じて見られるアフリカ文化の共通性、さらに私たちの文化との間の共通性についても気付かせたい。上記の資質を育成するためにシミュレーション、ロールプレイ、ゲームなど多様な学習活動を組み込んだ。具体的な単元は、ケニアでは「アフリカ象の物語」「サファリに行こう」「女性の暮らしと開発」「多民族社会ケニア」、セネガルでは「人と暮らし」「暮らしの中の宗教」、ザンビアでは「人々の暮らし」「子どもと教育」である。
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