本研究の目的は、高等学校における古典の授業が、大学受験に対応した内容と学習指導要領に対応した内容とに、二分化されている実態を明らかにすることと、その解決策を提案することである。大学受験に対応した内容については、入試問題と受験参考書の調査によって明らかにし、学習指導要領に対応した内容については、教科書の学習の手引きの調査と授業報告や古典教育の意義論によって明らかにしようとした。資料の調査対象とした時期は、昭和40年度から平成8年度である。 調査の結果、この間において変化しない状況であることが明らかとなった。 ・学習指導要領の内容は文章の内容把握と、それに基づいた考察が中心である。 ・大学入試の内容は古典文法と古典語彙の記憶に基づいた、現代語へ翻訳が中心である。 上の傾向は変化していない。 『伊勢物語』の23段と24段を対象に、入試問題、受験参考書の内容、教科書の学習の手引き、授業報告の資料を対照させて、二分化されている実態の具体例をまとめた。 解決策の提案として、授業報告の中から、文章の内容把握とそれに基づいた考察が行われているものを抽出し、古典文法に大きくとらわれず、学習者の感想を積極的引き出す展開を持つ授業によって、実現していることを指摘し、今後の可能性を示唆するものとして位置づけた。
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