研究概要 |
音声情報の時間軸変換処理と同期させて視覚情報(ビデオ映像)の時間軸変換処理(SV処理)を用い、字幕で意味解釈の補強を行えば,より効果的なリスニング教育・学習システムの可能性が浮上するという観点から,本年度の主な研究目的は,1.語学学習上に観る音声・映像・字幕による多重チャンネルモードによる提示がもたらす功罪の検証及び解析の為の資料収集,2.SV処理実験刺激作成システムの構築,3.実験刺激の作成及び予備実験の実施及び結果の解析,であった。現在までに判明した知見を以下に示す。 1.語学教育及び視聴覚教育に関する国内主要学会及び大学発行の研究紀要,そして英語教育関連雑誌に掲載された研究報告を基に先行研究に関する調査を行った。平成9年11月現在で約40件の関連発表がなされていた。全体の約7割が音声・映像・字幕の多重チャンネルモードによる教材提示では,互いの提示モード間での干渉が初級者レベルでは障害となり,効果があがらず適当でないとの見解でほぼ一致しており,上級学習者については干渉の度合いも低く,理解度が上がるとの効果報告を出していることが判明した。 2.SV処理実験刺激作成用に不可欠とするシステム構築用に当初要求した設備備品を揃え,予備実験用素材の作成及び実験に取り掛かった。 3.SV処理速度をパラメータとする数種類の実験刺激を作成し,日本人大学生を被験者として予備実験を行った。本年度は,特に提示素材の理解の度合いを観察した。その結果,単に多重チャンネルモードのみの提示と比較して,SV素材では学習者のレベルに拘わらず約10%〜15%の上昇傾向が観られた。平成10年度では予備実験の結果を踏まえ,更に実験を重ね,知覚及び記憶度に焦点を当て,時間軸変換処理済素材の効果・否定の両特性を明確にしたい。
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