研究概要 |
音声情報の時間軸変換処理と同期させて視覚情報(ビデオ映像)の時間軸変換処理(SV処理)を用い,字幕で意味解釈の補強を行えば,より効果的なリスニング教育・学習システムの可能性が浮上するという観点から,本年度の主な研究目的は, 1. 集団学習形態にありながら,呈示するビデオ教材の再生速度を個々の学習者の習熟度に応じて合わせる,即ち,ファインチューニングのできるSV処理システムの模索, 2. AV刺激より遅い速度のSV刺激で訓練させた場合と,逆に速い速度で訓練させた場合の聴解力,理解力,及び記憶保持立に及ぼす影響並びに優位性の差異の解明,3. 英語字幕の有無が前述2に及ぼす影響の解明,であった。現在までに判明した知見を以下に示す。 1. 初級学習者は英語字幕に集中しやすくSV処理を施した映像の効果が相対的に低く,中・上級学習者で効果が発揮されることが観察されたことを鑑み,音声・映像・字幕の各モード提示に時間軸変換処理装置を同期させたシステムの実現が強く望まれる。本システムの実現は,既存の視聴覚教室にて容易に実現されるものであると考えられる。 2. SV処理速度をパラメータとする数種類の実験刺激を作成し,日本人大学生を被験者としての実験結果から,多重チャンネルモードのみの提示と比較して, SV素材では学習者のレベルに拘わらず約10%〜15%の上昇傾向が観察された。他方,知覚及び記憶度合では提示モード別でばらつきが観察され,効果・否定の両特性が確定できず,更なる継続研究の必要性が判明した。 3. 英語字幕の有無は,上述1の干渉結果があるものの,どのレベルにおいても一定の効果のあることが判明した。初級者には理解度の助けとなり,上級者には更なる理解度の向上に繋がることである。
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