障子本来の機能は、自然の厳しさや視線を「障ぎる」ことにあり、日本の気候風土のなかでの一時的遮断性は、欧米の気密な建築様式に比較して、簡易で、わずか障子一枚の効果でも重要な役割を果たしてきた。現在障子は、外壁や窓などシェルターとそこに存在する居住者の間にあって、環境の微調整を行うものの一つとしての役割を演じている。居住者の様々な要求と変化に対応して内部環境を直接形成している、衣服に近い直接性を有するものである。学校教育の場における各座席から見た児童にとっての教室内視環境は、窓からの直射日光が入り、カ-テンで遮光した場合にも、隙間からの木漏れ日や風による揺れで数万ルックスから数十ルックスという照度分布差が瞬間的に児童の視野に入り、無自覚のまま過度の視機能調節による眼精疲労をもたらすことが心配される。 学習環境としての光環境は、児童の視覚・視機能の発達や疲労に直結しているが比較的注目されていない。ここでは、ガラス窓、カ-テン、及び障子導入が、教室内照度・輝度分布がどのように異なるかを明らかにし、児童自身が自ら自覚症状を記述、視環境の評価等を行うことによって、自らの心身状態をよりよいレベルに保つために環境調整・改善にいたらしめる主体的学習環境改善のための実験を試みた。ここから得られた結果を教員養成大学である東京学芸大学の共通基礎の授業に展開した結果、学生たちにあらためて学習環境に対する微調整の大切さと伝統日本家屋と障子の温故知新となり、身近な生活環境改善への動機づけとなった。気密な集合住宅に用いた場合の障子の換気能、保温性、通気性、光の拡散効果等についての基礎実験も同時に行い、教材として授業に展開した。
|