障子導入による教室内環境諸因子の緩和が、児童の心身状態の安定や健康にどう関与するか、を明らかにするために実施してきた実験結果から、教室内温度条件の緩和、光の拡散効果、空気質の浄化力が予測された。 とくに、光拡散作用は、教室内の窓側と廊下側、個々の座席別にみた著しい照度分布差、輝度比を緩和して、児童の眼を守るであろうこと、すなわち不適切な光環境下での固定した学習作業は、知らず知らずのうちに、眼精疲労をもたらし、無自覚のうちに学習意欲の減退にもつながる恐れがあろうことに注目してきたわけである。一方、障子は、視界(外の景色)を遮断するので、枠で固定した実験状態での障子が導入された教室内空間に滞在する結果になったので、男児にとっては、「外が見えると良い」、「破いてはいけない」との担任の配慮も含め、自然に行動に規制がかかることとなった。また保温性が優れ、換気量が少なくなるため、太陽光を受けると教室内温度が上昇した場面も生じた。障子導入時きめ細かな配慮の必要性を感じるとともに、今後対処しなけれなならない課題が得られた。 一方、障子紙の製造工程を山梨県市川大門の出向き、伝統的な手漉き和紙と機械抄き和紙を見聞する機会を得た。児童が自身で、手漉き和紙の体験学習を行うことと、和紙の原料として、すでに使用済みの和紙を用いて、手漉きをしている作業工程はを体験できたことは、改めて樹木からのパルプ、草木からの繊維の利用など「環境保全」の含めた人と自然とのふれあいに子どもを導く環境保健教材になりうることを確認し、実施計画に導入するための基礎教材としてのまとめを行った。 障子の原料の中に、スケールを剥離した羊毛を入れた障子紙を試作品を実験障子として用いた。ホルムアルデヒド等の建築衛生学的に問題になっている化学物質の吸着に有効か、その分析によってアレルギー対策として室内空気質(ホルムアルデヒド等)の浄化、緩和作用を明らかにするための基礎実験を次年度に向けて、準備中である。
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