学習障害児3名を対象とし、文章刺激および記号刺激を反復呈示して再認課題を実施し、眼球運動を測定した。対象児は、WISC-Rによって言語性タイプと動作性タイプに分けられた。言語性タイプの対象児における、文章刺激に対する眼球運動軌跡は、適切に文章を追跡していなかった。また言語性タイプの対象児では、右眼における注視点数において、1回目の記号刺激に対する注視点数が、文章刺激に対する注視点数よりも多かった。他方、動作性タイプの対象児では、右眼における注視点数において、1〜3回目の文章刺激に対する注視点数が、記号刺激に対する注視点数よりも多かった。これらの結果は、言語性タイプと動作性タイプの対象児の、大脳左半球における処理特性の違いを反映するものと考えられた。言語性タイプの対象児では、1回目の文章刺激に適切に対応できないことが、眼球運動軌跡及び注視点数からうかがわれた。 事象関連電位測定では、線画刺激を反復呈示し、同定および弁別を課題とした。低正答率群の後頭領導出P130が、高正答率群よりも小さかった。また、前頭領導出P200も低正答率群の方が小さかった。これらの結果は、低正答率群における初期視覚処理過程における問題を反映することが示唆された。言語性タイプの対象児は低正答率群に属しており、動作性タイプの対象児は高正答率群に属していた。 眼球運動測定結果と事象関連電位測定結果とをあわせて検討すると、言語性タイプの対象児は、初期視覚処理過程に問題があり、そのために反復呈示の1回目では、複雑な刺激を処理しきれないことがうかがわれた。しかし、反復呈示を繰り返すと、次第に学習が進行し、処理効率が上がることがうかがわれた。このことから、言語性タイプの学習障害児には、適切な刺激持続時間と時間間隔で反復呈示する方法の有効性が示唆された。今後さらに例数を増やして検討する必要がある。
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