言語性学習障害児1名を対象として、対象児の認知特性に応じた文章呈示方式を開発し、反応を分析・検討した。対象児は、WISCおよびK-ABCの結果から、周囲の状況を視覚的に理解しているが、言語的理解は十分とはいえず、文章の分析力はかなり不十分であると想定された。また、ものごとを順番に処理してゆくことに困難があると想定された。効率よく学習が進行しないことも想定された。 対象児の眼球運動測定結果からは、文章刺激の反復呈示を行うと、1回目の刺激に適切に対応できないことが、うかがわれた。また文章のフォーマットの処理に問題をもつことが示唆された。しかし、繰り返し処理すると徐々に処理効率が向上することが示された。さらに対象児らの事象関連電位測定の結果からは、初期視覚処理過程における問題を有することが示唆された。 上記の結果より、この対象児には初期視覚処理過程に問題があり、そのために反復呈示の1回目では、複雑な刺激を処理しきれないことがうかがわれた。しかし、反復呈示を繰り返すと、次第に学習が進行し、処理効率が上がると想定された。このことから、言語性タイプの学習障害児には、適切な刺激持続時間と時間間隔で反復呈示する方法の有効性が示唆された。また継次的処理が適切に進行しないことから、一度に呈示する文字情報量を少なくすることが必要と考えられる。これらの考察に基づいて、対象児Kの継次処理の困難さにかかわる認知上の問題を援助するため、反復分割刺激提示方式および電光文字呈示方式の開発を試みた。
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