研究概要 |
1.学習困難児を対象として認知機能検査WISC-R,K-ABCを実施し、全般的な認知機能を分析した。また文章黙読課題、絵画探索課題を行い、同時に眼球運動を測定して、各課題における眼球運動特性および問題点を分析・検討した。さらに対象児に視覚刺激反復提示課題を実施し事象関連電位を測定して、視覚情報処理過程の問題点を検討した。 2.眼球運動測定では、体動等による測定困難のため、対象児5名中、低言語性学習困難児1名と低動作性学習困難児1名の眼球運動を測定しえた。低言語性児では、ひらがな文章課題において文章や単語の切れ目に注視点がくることが少なく、文章フォーマットを効率的に処理することに困難のあることがうかがわれた。他方、低動作性児では、複雑な絵画探索課題において目標物から離れた部分への注視点が多く、空間的情報を効率的に処理することに困難があると想定された。 3.1名の低言語性学習困難児を対象として、認知機能検査、眼球運動測定、事象関連電位の各種データから、視覚的認知過程における問題点を総合的に分析・検討した。この対象児は認知機能検査からは、継時的情報処理方略が適切に行われにくく、言語情報の処理に困難を有することが想定された。眼球運動測定からは、文章フォーマットを適切に処理することに困難のあることがうかがわれた。さらに事象関連電位測定からは、パタン知覚に関する初期視覚情報処理過程に問題を有することが想定された。これらのことから、文章読解の問題を生起させている認知過程上の原因を推定した。そして障害を軽減させ得る方法の一つとして、1文字提示法を実験的に検討した。その結果を基に、対象児に適した教材開発の方法について検討した。
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