特殊学校の教師と生徒40組の会話に対する会話の均衡回復と会話崩壊の修復を目的とする介入の試みから次のような知見が得られた。1)軽度遅滞ないし境界線級知能の盲学校生徒との会話では教師主導や生徒の伝達の無視がみられた。介入によって生徒の主導性が促され、伝達が承認されたが、相互理解には至らなかった。2)聾学校生徒との会話みられた会話の不均衡も教師が応答的になると改善したが、生徒との相互理解には至らなかった。会話の崩壊は教師側の伝達身振りの利用の拡大と適切化によって修復された。3)話しことばをもたない精神遅滞の養護学校生徒との会話では、会話の不均衡は教師主導と非言語伝達の不足によっていた。教師が応答的になったり非言語的に伝えたりすると均衡が回復したが相互理解には至るとは限らない。会話の崩壊は多様で、かつ生徒の行動問題と関連していた。介入によって修復されると行動問題も起きなかった。4)話しことばをもつ精神遅滞の養護学校生徒との会話での不均衡は、教師による主導と非言語伝達の軽視が原因であった。教師が応答的になったり非言語伝達を活用したりすると均衡が回復した。会話崩壊は多様に生じ、半数は生徒の行動問題と関連があり、修復されると生じなかった。構音障害、意味語用障害、言語と知的水準の乖離による会話崩壊は教師の非言語伝達活用で修復された。5)広汎性発達障害の疑われる養護学校生徒でとの会話では、話し言葉を持たない場合は相互作用手順の対人的意味の誤解が崩壊につながった。反響言語や不適切発話の目立つ場合、発話意図の誤解を取り除くと崩壊が修復された。不均衡は教師が応答になると解消したが、かわって会話崩壊が生じた。普通に会話できる場合は、教師の会話方略を心的体験解釈から現実叙述にかえると崩壊が修復した。会話崩壊は半数が生徒の行動問題と関連し、修復されると行動問題が起きなかった。
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