本年度の研究は、チゼック授業の特徴分析をもとに、『教育美術』(第53巻・第54巻・第55巻)における実践事例のコミュニケーション構造の分析作業、及び指導方法の特徴を分析・考察してきた。その過程で、イメージ生成をどうするか、また身体を通してどう形象化させるかという「想像すること」と「構想すること」が指導上の要点であることが明確となってきた。そして、これらの問題は、児童・生徒の過去の生活経験と、授業活動中の経験の質に関係することが読み取れた。この結果、図画工作・美術の授業の方法上の違いは、教師がイメージ生成とイメージの形象化についてどのように捉え、その認識を題材観や教科観、指導観にどう反映させているかという点にあることが認識できた。すなわち、教員養成系学部・大学院における美術教育方法の学習では、初学者や初任者に、児童・生徒のイメージ生成と形象化の指導方法が多様であることに気づかせることが重要な決め手となると結論づけられる。しかし、イメージ形成にかかわる指導方法の「マトリックス」化は、類型を描くのには有効であったが、反面、質的に描き表せないものも多く画一的に汎用化する問題点も多々あることを痛感した。こうした本研究の成果は、学部・大学院において学生・現職教師が主体的、創造的にカリキュラム開発や授業実践にアプローチするために、指導者が児童・生徒のイメージ生成・形象化にどう取り組んでいるかという具体的方法を収集できた点にあるといえよう。
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