(1) 創造的思考は、他の認知能力と区別される能力であること、さらに、創造的思考には領域固有性があることの2点を調べることにより、理科版創造的思考検査の必要性についての根拠が得られる。この2点を実証するため、まず、理科の学力要因を調べる調査問題を作成し、中学生に実施した。その結果、創造的思考因子が、知識理解因子や応用力因子とは別に抽出できた。また、その因子が創造性を反映しているかを、自由試行の活動の観察結果と比較した。その結果、創造的な活動をする生徒は高い因子得点を得ているなどいくつかの知見が得られた。 (2) 次に、創造的思考の領域固有性を調べる調査をした。その結果、創造的思考は、理科、社会科、数学科のグループと美術、家庭、国語、英語のグループで違いが生じ、ある程度の範囲で領域固有性を持つことが明らかになった。 (3) 理科拡散的思考検査を開発した。この検査は、原因追究、観察、予想、データ解釈などの科学的な探究技法の場面において、拡散的思考がどの程度できるかを調べる設問からできている。この検査とS-A創造性検査や学業成績との相関を調べることにより、この検査の妥当性を検証した。 (4) 理科類推創造性検査を開発した。この検査は、理科の事象と一般的な事象を類推によって関係づけることができるかを調べる設問からできている。この検査を実施し、その結果から、拡散的思考検査との相関や学業成績との相関などを調べた。また、この検査得点の高い者は、リンクパターンや使用ラベル数でより優れた概念地図を作成できることも明らかとなり、検査の妥当性が検証できた。
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