本研究では、高等学校家庭科の住居・住生活領域の学習において、高齢者の生活を取り入れた地域教材の開発と授業実践研究を行うことを通して、この領域の教材や学習の進め方について新たな方向を提案することを目的としている。この目的を達成するため、本年度(二年計画の初年度)は、基礎的な検討事項として、(1)前述したような教材や授業研究についての先行例を収集、検討することと、(2)高齢者の住生活に関する各地域における研究成果を収集、検討することの2点を取り上げた。 (1)の検討結果については、裏面「研究発表」の上記二本の論文にまとめている(二本とも1998年中に発行予定)。家庭科における高齢者に関わる学習は、高齢者、彼自身についての学習とともに、衣食住などの生活資源や消費生活、生活環境・文化、社会福祉等の従来の家庭科学習の中で、それぞれ高齢期の生活についても取り上げていくことによって、生活を見る視点を広げ、深めることになると考えることができた。住居・住生活領域の学習における高齢者をも視野に入れた教材や授業実践研究の先行事例としては、バリアフリー空間についての授業が中心であった。しかし、まだ少数事例ではあったが、機械的なバリアフリーのみならず、高齢者らしさのあふれた住空間に注目させることで、高校生の住まいに対する視野を広げ、深める機会になり得る可能性について示唆を得ることが出来た。 (2)については、各地の高齢者向けの居住関連の施設を見学、資料収集するとともに、それらにおける高齢者の生活研究の成果についても収集することが出来、来年度の教材開発、授業計画に生かすことにした(裏面「研究発表」の3番目の論文は、これに関わる筆者自身による研究成果である)。
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