原子・分子概念は中学校にその出発をみるが、物質構成については小学校にその基礎がある。すなわち、物質が粒子であることの確認が大切である。よく例に出される古代からの物質観との関係でみると、アボガドロの分子説の史実的な判断は別にして、歴史が示す通り簡単には受け入れにくい。一般に生活においては物質から物事を考えていくとすれば、分子概念が優先されるが、科学的思考として原子を考える方が単純でわかりやすい。これらの歴史的経緯との関係は論文(愛知教育大学教育実践総合センター紀要)として公表した。その際、小・中学校教員の教育研究集会での資料を多く利用することにより実践的な方策を探ることができた。また、概念育成を阻む要素については、日本理科教育学会東海支部会で発表したが、中学生の化学式の知識では日常的によく耳にするH2O(エイチツ-オ-)は正解率が大きい。一般に名前の知られた物ほど高い。しかし、これは覚えているのであって、その構造を理解しているわけではない。そこで、イメージ化をはかる必要があり、コンピュータ教育ソフト作成に携わって検討を試みた(ベネッセコ-ポレーションのマルチブック監修)。中学校での溶液の理解として、目に見えない水分子や食塩のイオン化などを、拡大鏡を使ってみるという内容で、大学院の授業で検討してみた。反応はもう一つであった。これは理科系学生にとってはあたりまえのことなので、興味をそそられる内容ではなかったようだった。しかし、この実験でのアイデアは、これ以上は分子を動かすソフトの開発になろう。その点では化学教育に分子構造を取り入れて公開しているインターネット利用が便利である。今回の研究でも新潟県立女子短大本間助教授に協力者として助言をいただいた。ソフト等での学校現場での実践が結果が待たれる。
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