本年度は、DBAE関連文献やビデオ等の映像メディア資料の収集とDBAEのディシプリンの一つである美術批評の一例としてアート・ゲームの検討を中心に行った。文献類はゲッティ財団から刊行されたものが中心である。その他、横浜美術館での「画像データベース研究会」に参加し最新の画像データベース研究の成果に関する資料と知見を得た。この画像データベースの検討は、DBAEの教科書教材のデータベース化のための分類項目や検索項目の設定に有益である。 DBAE研究の一つの焦点となっている美術批評の問題については、いくつかのチェックシートを試作し、美術館の学芸員や小学校の教員の協力を得て、記入テストをしながら改訂を進めてきた。今後は、このシートを美術館の解説ボランティア等の基礎教育にも使う計画を立てている。作品を見ながらこのチェックシートに記入していくことが、次に述べるアート・ゲームにおける作品分析の視点を得るための基礎的な活動となる。 次に図版カードを使った「アート・ゲーム」に関して、主として北米で刊行された文献に基づき、日本の美術館での実践も踏まえて、50種類以上のゲームを検討した。その研究の前半部分を、愛知教育大学の研究報告に発表した。このアート・ゲームは、作品を見ての直感的な反応によりながら、その直感の背景にある作品分析の多様な視点を意識化することで、自分の判断の正当性を主張する形式のゲームである。この多様な分析視点の意識化とその応用という活動は、DBAEの鑑賞教育論のなかでも中核をなす考え方である。図工・美術科において鑑賞教育が重視されつつある現在、従来の一斉指導型の解説方式とは異なったこのような柔軟な鑑賞教育の研究は重要である。
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