今日、近代に構築された「性」や「家族・家庭生活」のあり方が問われている。一方、登校拒否や高校中退の増加、青年期の自立の困難さが指摘され、中等教育のあり方も問われている。生徒が自分の生き方と社会を探求する学びの必要性が指摘されており、現代における「性・家族・家庭生活」に関する学習の内容や方法の検討が必要である。 1998年度は、教育課程審議会答申(1998年7月29日)において「総合的な学習の時間」の設置が示され、小学校・中学校学習指導要領(1998年告示)と高等学校学習指導要領(1999年告示)の中に位置づけられ、「総合的な学習の時間」の先行的実践が指定校を中心に実施された。そのため、1998年度は、1997年度に行った「性」や「家族・家庭」に関する実践分析をふまえ、「総合的な学習の時間」を活用してどのような実践を創り出す必要があるのか、総合学習に求められる条件と課題を中心に検討した。 今日、学校教育は、これまでの知識詰め込み式教育のいきづまりと、環境・開発、平和・軍縮、ジェンダーや民族などの人権、といった人類的課題の意識化とそれへの対応(近代主義的科学の限界)、消費社会化の進行に伴う生活の変容への対応などの点から、各教科の授業や教育課程編成、学習論を問い直すことが求められている。人類的な課題への対応の一つとして、近代に構築された「性」や「家族・家庭」の問い直しがあり、教科編成の自由がない中で「総合的な学習の時間」を活用し、学習をつくりだすことは重要である。その際必要なことは、現代的課題に取り組む時の視角(即ちジェンダー)をもつこと、内容や方法に関する教師と子どもの共同決定をつくりだすこと、子どもが学校外の社会の現実とつながり、共同で議論し、教師と共に自分と社会を捉え直していく学びをつくりだすこと、である。一方、各教科の授業を同じ視点から問い直すことや、教科を諸科学に対応させたり、体験などの学習方法により特徴づける教育課程編成を問い直すことも必要である。
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