本研究では、空間思考を、主として図をもとに像をつくり、操作する心的活動と捉える。第1年次の本年度は、次の2つの面から研究した。 1.空間思考に関する基礎的理論的研究 ヤキマンスカヤ著「生徒の空間思考の発達」を主とする文献研究を行った。 2.児童・生徒の「空間思考」に関する調査問題の作成及び予備調査の実施 上記の文献研究で得られた知見を基に、空間思考の主要な要素と考えられる心的活動の側面を同定した。心的操作に関する児童生徒の到達度、小・中・高校の各段階でみられる心的操作の特徴、及び発達の傾向等を捉えるために、調査問題を作成し、平成10年3月、小学校1〜6学年、中学校1〜3学年、及び高校第1学年の各1クラスで、予備調査を実施中である。 調査問題は次の内容のものである。( )内は調べたい心的操作を意味する。 (1)立方体の平面上の回転(念頭での、東西南北への90°回転とその合成) (2)与えられた情報から、立方体の向かい合う面の同定(視点の変更) (3)結び目ができるひもとほどけるひもの判別(空間における曲線の交差の判定) (4)絵(安野光雅またはエッシャー)を見て、不思議なところを言葉で説明する(3次元ユークリッド空間における立体構成との違いの認識とその説明の仕方) (5)ポリキューブの穴通し(念頭での立体回転、投影的見方) (6)タングラム(念頭での図形の合成・分解) (7)水の入った直方体の容器を1辺を固定して傾けて一定の水を出していく。ある時点での、水面の形の判断、展開図における水面の表示(応用力) 現在、一部調査中で結果の分析を終えていないが、興味ある結果が予想できる。 なお、購入備品のコンピュータは結果の分析処理に、また、デジタルカメラ、テープレコーダは生徒の活動の様子及び発話を記録・分析に有効に使っている。
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