研究概要 |
第1年次の予備調査の結果を踏まえ、第2年次は、大阪、広島、島根地区の公立小学校・中学校・高等学校の児童生徒(計約2000人)を対象に空間思考に関する本調査を行った。調査問題は、第1年次報告に記載の問題と一部を除いて同じである。 調査結果の分析と考察から、次のことが新たな知見として得られた。 (1) 空間思考の5段階とその特徴 第I段階(小学校1-3年).この段階は、調査問題の項目によって反応率に大きな振動がみられる。図による直観、一面的な視点、大きさより形に注目がいく結果と見られる。 第II段階(小学校4年).小4年では、ある問題に対しては第I段階の特徴を示し、他のある問題では独自の傾向を示し、別の問題では第III段階の傾向に近似している。 第III段階(小学校5-6年).正反応率は低いが、全体として、第IV-V段階の縮図である。この段階までに空間的思考の素地はできているといえる。 第IV(中学校1-3学年).第IV段階では、念頭での立体回転・変形、視点の変更、投影的見方に関する問題は、正反応率は7割止まりである。 第V段階(高等学校1-3学年).第V段階では第IV段階と比べて、正反応率が10ポイント以上高くなるものとほとんど変化しないものとに分かれる。 (2) 男女別反応 問題によって異なるが、男女差がはっきり現れるのは第III段階以降である。特にある種の問題では、第III段階での男女差の傾向が第V段階まで続き、V段階では15ポイント以上の差(M>F)が顕れた。 (3) 空間像とその操作の特性. 子どものメモ書きや面接から、課題解決において、児童生徒は次のどれかに分類できる。(1)図表示を用いる (2)文字・記号を用いる (3)図表示および文字・記号を用いる (4)何もかかない。(1)の図表示では、3次元図、2次元図、1次元図(線分の関係など)が用いられている。空間像とその操作が自由にできることは、(1),(2),(3)が課題に応じて使えること、および図表示における3次元図⇔2次元図⇔1次元図の間のきり換えが自由にできることが重要なポイントなることが判明した。
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