研究概要 |
造形体験を促進する学習ソフトウェアの開発に関して、その基礎的な枠組みを明確にするために以下のような予備的研究を行った。まず、初等教育における造形体験について特に身体性とコンピュータによるヴァーチャルな空間との関わりに焦点を当てて考察し、それを「心の触れ合いに根ざす身体を使った造形活動」としてまとめた。そこでは、昨今の教育問題のうち、マルチメディアやゲームなどの仮想空間にとらわれて内蔵感覚とか身体感覚、あるいは感覚情報の欠如といったことが指摘されているが、直接的で感覚的な機能を回復するという消極的なものではなく、コンピュータ・テクノロジーの発達により、仮想空間と体験とが不可分なものとして考えるようになっていることを指摘した。そして体験に根ざす造形課題をコンピュータ上でいかに保証するかについて身体=仮想空間との関係性と心的触れ合いを強調して検討した。 次に、コンピュータを利用して表現活動を展開するための発想段階での示唆を得るために、「造形的発想を支援するシネクティクス理論の応用に関する一考察」をまとめた。そこでは創造的な造形を期待するために、創造技法のひとつであるシネクティクスにもとづくニコラス・ル-クの提唱する創造性啓発メカニズムを応用して造形発想力を高める上での有効性を具体的な教材開発をもとに探った。 さらに、ソフトウェア開発上必要と考えられる3Dソフトウェアを使用した表現の可能性を考えると同時にネットワーク上における共同表現の可能性についてもVRML,JAVA言語を使用して試行的なプログラム開発を行い、具体的な教材案を提示した。それを「図画工作科におけるコンピュータを利用した表現システムの構築」としてまとめた。
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