本研究は、小学校図画工作科において生きる力につながる造形体験を重視したコンピュータ利用のの表現システムの開発を目的とした。コンピュータと従来の表現方法の比較を行い、コンピュータの表現における自由度や描画能力劣等感の排除などのメリットがあることが分かり、平面表現では色・形・様式・視点の変化、立体表現では無重力状態・自由な加工、さらに、時間軸の設定などコンピュータにより表現の自由度が増すことが明らかになった。また、子どもの発達段階と思考の仕方から、直接ものを扱わないコンピュータによる表現の適応時期を配慮しながら、イメージの再構成など従来の表現では経験できにくい活動をコンピュータを用いて体験させれば子どもの表現に有効になると考えた。これらのことから、コンピュータを利用した美術教育として(1)造形性を高めるもの、(2)行為の中に造形要素を含むもの、(3)イメージを広げるもの、(4)機能を生かした創造をするものという視点が導かれた。コンピュータの使い方に関しては、インターフェイスの側面から「分かる」「使える」「使ってみたい」の条件設定が必要であることが分かった。また、現代の表現方法、技術の進歩から、表現がインタラクティブ(双方向性)を持ち、コニュニケーションが図れる表現方法が可能であり、それらはインターネットの発達によりさらに多くの人に受け入れられている現状が明らかになった。以上のことから、表現システム開発の視点を(1)3D表現、(2)インタラクティビティ、(3)コミュニケーションと考えた。そしてコンピュータを利用した美術教育の4つの視点と表現システム開発の3つの視点をもとに表現システムの設計を行った。ネットワーク環境を基盤としたJavaとVRMLの言語を用い基本となるSPACE-SHAPE-SYSTEMをプログラミングし、それを使った教材開発を行った。
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