2年目に当たる本年度は、研究実施計画に基づき二つの作業を実施した。第一に、初年度に実施した英語基本構文定着度調査の一貫として、4月当初に中学2年生を対象に過去1年間に及ぶ英語学習での英語基本構文の定着度を測定するための調査を初年度と同じ被験者に対して実施した。さらに、初年度の調査結果を受けて、その追調査を前年度と同じ二つの調査協力校で実施した。1回目は、9月当初に1学期の学習の中での基本構文の定着度を測定するための調査を両方の調査協力校で実施した。2回目は、1月当初に一方の調査協力校で1・2学期の学習の中での基本構文の定着度を測定するための調査を実施した。3回目は、今回の研究成果を年度内に集約するため、両方の調査協力校で3月に実施した。二つ目の作業は、本年度に行った英語基本構文定着度調査の結果の分析である。具体的には、コンピュ―タを活用して、被験者一人ひとりに対して個々の基本構文の定着度をインプットし、英語構文定着度に関する個人カルテを作成した。この個人カルテをさらにコンピュータ処理することによって以下のことが判明した。第一に、同じ英語基本構文であっても、そこで使用されている語彙項目の違い(具体的には主語や述語動詞の種類の相違)や、文の種類(平叙文や疑問文)の相違によって、基本構文の定着度に大きな変異が見られる。次に、この変異を被験者の学力と関連づけて分析すると、学力的に上位にある学習者は表面上の違いに影響される度合いが小さい反面、学力的に下位にある学習者は表面上の差異に大きく影響される。さらに、この種の変異は英語学習の入門期に当たる1学期の段階から顕著に見られる。これらの事実は、表面状の違いに捕らわれず、英文の背後に存在する関係概念として英語構文を理解する能力が入門期の段階から英語学習の成否に直接関わる重要な因子となっていることを示唆している。
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