1[成立の背景]-北海道では、自然環境(季節・気候・生産物)、社会環境(行事・習俗)などが本州と異なることから、常に「北海道には北海道の実情に即した国語教科書を」という切実な要求があった。全国を対象として編纂される教科書(とりわけ国定教科書)ではこの不満は大きく、北海道の教師は北海道版教科書の実現を強く希望してきていた。折しも昭和20年代半ば、教科書制度が国定制から検定制に改正され、一教科に複数の教科書が編纂・発行されることになり、これによって北海道の長年の悲願が実現されることになったのである。 2[種類]-こうした背景から生み出されたのが、「北海道版検定国語教科書」(正式名称は『小学国語』、28年度、29年度改訂版、31年度新版の三種類-いずれも藤村作・北海道国語教育連盟編、教育出版株式会社発行)-総計33冊であった。昭和28年度版、同29年度改訂版は、一年生から六年生までの全学年で編纂・発行された(それぞれ13冊)。同31年度新版は三年生までの7冊が発行されたところで地方版教科書を認めない政治決断なされたため、四年生以上の発行は停止ということになった。が、この間、「北海道版検定国語教科書」は、文字通り北海道の国語教科書として北海道全域で採択され、使用された。この影響を受けて中学校国語教科書においても北海道版が検討されたが実現せず、この斬新な試みも小学校だけに止まった。 3[特色]-「北海道版検定国語教科書」は、一般の国語学力を育成するとともに、北海道の実態を児童に知らせることをもその大事な目的とした。北海道の自然・生活・産業を中心に、説明文・童話・詩・伝記・紀行文の表現形式で記述した。その意味では、全国的にも珍しい、特色ある国語教科書であった。
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