大正、昭和初期(1912-1940)の英語教育史研究の初年度であった平成9年度は、主として、資料の調査・収集を行うと同時に、これらの資料に基づいて、大正・昭和初期の英語教育年表を作成した。このことにより、この時期の英語教育の全体像を明らかにすることができた。 第2年度は、この時期の英語教科書に焦点を当て、教科書の構造と内容の視点から、大正・昭和初期の英語教育の特徴を明らかにしようと試みた。資料として用いた教科書は次の通りである。(1)岡倉由三郎著The Globe Readers(1907)Vols.1-5(2)熊本謙二郎著New English Drill Books(1907)Vols.1-5(3)増田籐之助著The International Readers(1915)Vols.1-5(4)神田乃武著kanda's Crown Readers(1916)Vols.1-5(5)津田梅子・熊本謙二郎著Girls' New Taisho Readers(1921)Vols.1-5(6)竹原常太著The Standard English Readers(1932)Vols.1-5 これらの教科書を資料として、(1)教科書のねらいと構成、(2)各巻の内容と構成、(3)総合的評価、の各視点から分析し、教科書教材の特徴を明らかにした。この分析により、この時期における英語教育の実態を推測するための基礎的情報をある程度入手できた。 最終年度である平成11年後は、大正、昭和初期の特徴を明らかにするためには、明治期の状況も概観しておく必要があるとの立場から、明治期の代表的教科書2種、Barnes著National Readers(1883)および『正則文部省英語読本』(1889)についても、上述の視点から分析を試みた。さらにPalmerとの関係を明らかにするために、Palmerの検定教科書The Standard English Readers(1926)の分析も行った。このことにより、大正、昭和初期の特徴を明治期から現代にいたる歴史的パースペクティブの中で、ある程度具体的な形で明らかにできた。
|