本研究では、戦争終結直後からの沖縄県全域を対象にして、算数・数学の教育実践に関する資料を収集し、表題について研究を進めた。地理的、文化的な独自性に加え、復帰まで施政権が米軍にあったという特殊事情の中で日本人としての教育にこだわり学校教育を展開してきた沖縄は、地域個別的な課題を超えた、戦後のわが国の学校教育、本研究について言えば算数・数学教育の歴史、および、歴史的な課題を整理するのに典型な切り口を与えてくれる。 本表題に関しては、史料の散逸が実証的研究を難しくしているので、教育実践の様子を知り得る資料の収集と保存が急務となっている。また、戦後直後からの教育の復興の様子を、教育実践のレベルで包括的に描き出したものはなく、その作業が待たれている。 沖縄本島では、中・南部が戦争になったこともあり、ガリ刷の教科書を印刷発行する必要があった。そのための米軍の支援もあった。宮古・八重山の先島地域では、ガリ刷り教科書の編集も計画されたが、沖縄本島の刷まわし本や戦前の教科書の黒塗り本が使われた。奄美地域では、文部省の暫定教科書が教師用として配布された。最後となった国定教科書も持ち込まれ、その教科書を親が書き写して児童に持たせた。地域により戦後直後の状況は異なり、それぞれについて学校や算数・数学の授業の様子を描き出してみる必要がある。 授業案や授業で用いられた教材、教科書、当時の教師の証言や学校の様子について記述のある資料の一覧、および、収集資料に基づき描き出した教育復興の様子(一部)を報告書にまとめた。
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