本研究は平成9年度と10年度の2年間の継続研究で、平成9年度は「口頭言語データ分析ソフトウェア」を開発し、平成10年度はこの開発済みのソフトを使用して申請時に予定していたコミュニケーション方略(以下CS)に関するデータ収集実験を実施した。 実験は平成10年7月末から8月上旬に32名の日本人大学生の英語学習者を対象に行った。 収集したデータのうち学習者の個人情報に関するものは、次のとおりである:1)被験者個人個人の英語熟達度(クローズテストおよび英語学力測定に一般的によく使われるCELTを使用)、2)場依存の度合い(Group Embedded Figures Testという心理テストで測定)、3)判断速度(Matching Familiar Figures Testという認知判断力テストで測定)、4)曖昧耐性(Ambiguity Tolerance Scale IVという心理テストで測定)、5)被験者の英語の学習状況や使用状況(実験者の作成したアンケートによって調査)。これらの各種データの収集と並行し、開発したソフトを使い、CS使用を必要とするタスクを被験者全員に個人面接の形式で行った。この面接では、被験者に36枚の写真や図形について英語と日本語で説明してもらった。実験は言及物の提示から発話録音まですべてコンピュータを使って行った。 データ収集後すみやかに、発話の時間要因や発話内容についての詳細を開発したソフトによって分析し、得られた結果を集計して統計処理した。その結果、英語での方略使用は被験者の母語によって強く影響されるだろうという研究者の予想とは裏腹に、1)英語力が強く影響している、2)調査した認知要因のうち判断速度がCS使用に最も重要な要因となっている、3)言語の使用体験も重要な要素である、などのことが明らかになった。 なお、この実験に先だって、開発ソフトのテスト使用を兼ねて、インターラクションに伴うCS使用を同ソフトを使って実施した。この研究はすでに論文として発表(印刷中)した。また上記の実験結果については、今年開催される学会での発表(発表の申請は受理されている)と論文発表を予定している。
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