研究概要 |
「基礎的な英語」を中学校英語とみなし、被験者である短大生が実際に中学時に使用した中学英語検定教科書の文法項目と語彙を整理し、それらについてテストを作成、実施、結果の分析を行った。 1.(被験者265名)抽出した53文法項目の習得度は正答率にして57.9%、3年次導入項目は約30%と低い達成率であり、また1・2年次導入の疑問文の低調さが正答率全体を引き下げる要因となっている。中間言語を知る上で参考となる被験者の誤答を整序問題の答案より整理し、誤答表を作成した。同テストを平成7年から平成11年度の5年間実施(被験者総数1353名)した結果、文法テストの総点には統計的に有意な下降パターンが見られた。 2.(被験者51名)中学校検定教科書(全7社)の語彙を分析し、アルファベット順と頻度順の語彙リストを作成した。語彙力を音声(S)・意味(M)・綴り(O)の3要素間の変換能力、すなわち6下位能力の総体と定義し、作成した語彙リストをものにテストを作成・実施した。6下位能力の順位は、O→M、S→M、S→O、M→O/O→S、M→Sの順であり、総合的英語力(クローズテストの結果を利用)の高い被験者ほど音声入力の語彙力(S→M、S→O)が高く、逆に下位者は視覚的語彙力(O→S、O→M)での成績が高いという結果が得られた。 3.(被験者46名)文法力と語彙力では後者の方が英語総合力への影響力が強く、語彙の下位能力のレベルでは、OM,SM,SO,MSが英語総合力に、SM,SO,MOが文法力に寄与するとの結果を得、2での上位者に特徴的なSM,SO,MOと文法力との関連性がみとめられた。特にSMとSOは文法力・総合的英語力の両者と係わっており、これは、音声入力の単語の処理能力が文法の獲得、ひいては英語学習全体に有効に作用する可能性を示唆しているように思われる。
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