研究概要 |
本研究は子どもたちがすでに獲得している知識・技能の分析を先行させる必要があることから,まず児童の興味・関心を調査した。その際,教育内容(題材)は従来とは逆に情報科学(コンピュータ科学)・情報数学から得られた知見を活かして,オペレーディングシステムにおける「デッドロック=行き詰まり現象」をとりあげた。そして,児童のなかの「この問題に対する捉え方」を考察し,「潜在的な数理」として,「デッドロックの数理」をいかに認知しているかという構造を明らかにしようとした。そこで第一段階として,この題材に対する子どもたちから得られた調査回答を分析し,カテゴリー分析をおこない,以下の6つのカテゴリー(a型学習に関することb型自分を中心としてc型友人とのかかわりでd型学校に関することe型塾に関することf型社会に関すること)にわけることが妥当であること,さらにこの関心別のカテゴリー分割が,各カテゴリー項目間の比較分析に有効であることのみならず,学年間を比較対照することにより,児童の「年齢における認知構造の差異」を明確にできること(f型の出現比率が小6で約40%もあることに対して小5では約5%程度しか出現しないことから社会への関心に大きな年齢差があること。またこれらの結果は教育コースウェアに反映しなければならないこと)を明らかにした。また,デッドロックの現象を「何と何がぶつかりあうのかという構造」から以下の3つのタイプ(I型1つのことが単に行き詰まるII型2つのことが対立して動きがとれなくなるIII型ぐるぐる循環して終わりがない)に類別し,先のカテゴリーと連携させ,構造分析・比較対照をおこない,マスとしての学年間の比較と,通常の算数・数学の学習ではみられない「個としての児童の背景(子どもの内面や生活体験)」も促えることが可能な教育コースウェアであることを明らかにした。次年度は研究実施計画に従い,研究を展開する。
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