研究概要 |
日本語教育の教室は,異なる文化的背景をもつ者が日本語学習という共同作業を行う場である。本研究は,日本語学習のプロセスを社会的スキルの習得と態度変容の過程として捉え,実習の教室をフィールドとして,実習生と学習者双方のもつ文化的要因が,この共同作業にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的とするものである。 しかしながら,第1年めの平成9年度は,韓国での冬季実習がやむを得ぬ事情で中止となり,異文化要因を探る調査の実施が困難となったため,主として実習生側の態度変容と教授行動の変化の関係に焦点を当てて研究を進めることとした。 具体的には,言語学習ビリ-フ調査や授業に関する意識調査とともに,実習の前後で「外国人に対する日本語の授業」のイメージがどのように変化するかを,1997年6月,10月,1998年1月の3回にわたって個人別態度構造分析の手法をもって探った。現在1月のデータに関してのフォローアップインタビューを実施中であるが,これが終了し次第,昨年度までに収集したデータとの比較を行い,各事例から共通して浮かび上がる点と個別性の強い点を分類していく。なお,昨年度の実習で収集したデータについては,一部を事例研究として公表した。 また,態度尺度の作成に関しては,その基礎となる質問紙を作成・実施した。結果については,現在分析中であるが,被験者が少なかったため,今後,この結果をもとに試行的に尺度を作成するとともに,来年度のデータと統合した上での尺度作成も射程に入れて10年度の研究へとつなげる方針である。 実習授業のビデオデータに関しても,現在,プロトコルを起こして,相互作用分析と行動分析が行えるようデータを整理している。来年度の初めには,ビデオデータの分析結果と態度構造分析の結果を突き合わせて,本人の意識の向けられ方とその授業の場での発現の関係を見ていく予定である。
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