研究概要 |
まず,平成9年度に得た実習生(学部生)の授業に関する態度構造分析から特徴的な事柄を抽出し,学部レベルの実習生の日本語の授業に対する態度が,実習を経ることによって(当然のことながら)具体化する様子を明らかにした。「日本語の授業」から連想されるのは,日本語教授法,学習活動,第二言語習得のプロセス,学習者ストラテジーなと,それまでに勉強した事柄の観念的で漠然としたイメージで,実習を目前にしていても,日本語の授業と自分との係わりは希薄なものとして捉えられている。それが,実習で日本語を教えてみると,教師が弁えているべきことや学習者にさせたいこと,あるいは,実際に授業で行った活動や自分の授業では実現できなかったことなど,自分に係わるイメージに変化してくる。しかし,8週間のコースの運営と4〜5回の授業担当という程度では,実習生の意識はもっぱら自分に向けられ,学習者と授業との関係を意識するには至らない,と言える。 次に,1年程度の現場経験のある大学院レベルの実習生と,現職の日本語教師の授業イメージを持っているのかを,学部生と同じ手続きで調査し,学部の実習生と比べるべく分析した。その結果,この2者は,「授業に臨む際に心がけていること」を持っており,それが授業に対するイメージに比較的大きな影響を与えている点で,学部生とは異なっている。また,授業と自分,授業と学習者の係わりについての意識の仕方を見ると,1年程度の現場経験のある院生でも,まだ,自分が授業をどう考えどう感じるかが中心で,現職教師が見せた,学習者がどのように学習するか,学習とはどのようなものなのか,という意識とは大きく隔たっている。つまり,大学院レベルの実習生は,よい授業をするにはどうしたらよいかという発想で,現職教師は,学習や習得はどのように成立するかを考えていると言えそうである。実習生をこのレベルに導くには,実習のあり方を再検討する必要があろう。
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