研究概要 |
「日本語能力試験出題基準」のすべての語彙について、誤入力が予想される文字列をリストアップし、母音の長短関係4479項目、促音関係2454項目、両者に重複するもの1522項目を辞書登録した。 2.外国人学習者が日本語でコンピュータ入力している過程をスキャンコンバータをつかって、ビデオテープに録画した(98年3月現在テープ約50本、母語13種)。 3.録画した入力過程を再生して、誤入力をチェックし、誤入力データベースを作成した(98年3月現在約500件)。その結果、以下のような事実が観察された。 (1)誤入力は、母音の長短と、促音の有無に関するものがおおく、子音に関するものはすくない。たとえば、「留学」を「りゅがく」と入力するような例はおおいが、発話ではよくみられるn,d,rの子音の区別を、入力でまちがえた例はすくない。 (2)来日してからの年数がながく、日本語によるコミュニケーション能力がたかく、しかも専門性のたかい研究をしている者でも、日本人ではかんがえられないような誤入力をした例があった。たとえば、来日9年の者が「九州」「学校」を、来日3年の者が「郵便」を、それぞれただしく入力できない例があった。 4.(1)(2)から、個々の子音、母音のつづりは比較的よく記憶している(ただしただしく発音できない場合がある)が、母音の長短や促音の有無を記憶していない(だからただしく発音できない場合がある)学習者がおおいことが推測され、外国人学習者用漢字変換辞書を、母音の長短と促音の有無に関するものを中心にすすめる方向が確認できた。
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