研究概要 |
1. 「日本語能力試験出題基準」のすべての語彙について、誤入力が予想される文字列をリストアップし、母音の長短関係4479項目、促音関係2454項目、両者に重複するもの1522項目を辞書登録した。 2. 外国人学習者が日本語コンピュータ入力している過程をスキャンコンバータをつかって、ビデオテープに録画した(99年3月現在テープ約150本、母語28種)。 3. 録画した入力過程を再生して、音韻上の誤入力をチェックし、誤入力データベースを作成した(99年3月現在約1900件)。その結果、以下のような事実が観察された。 (1) 誤入力は、母音の長短、促音の有無、子音の有声無声など、調音のタイミングに関するものがおおく、n、d、rの弁別、ts、s、shの弁別など、調音点、調音方法に関するものはすくない。 (2) 在日年数がながく、日本語によるコミュニケーション能力がたかい学習者でも、基礎的な語彙を誤入力する例がおおい。 (3) 非漢字圏よりも漢字圏の学習者に誤入力がおおい。 (4) 母音の長短の誤入力は、母語に母音の長短の弁別があるかないかに関係なくみられるが、子音の誤入力に関しては、母語による差がみられる(朝鮮語母語話者のk,g、北京語母語話者のt,dなどが特におおい) (5) 学習者は誤入力でただしく変換されないとわかると、すぐに別の入力をしてみることがおおい。また、おなじ語について、ただしく入力した直後に誤入力することもある。 4. 外国人学習者が、日本語の調音のタイミングに関する音韻情報を正確に記憶していないことが確認された。今後は、学習者の母語による特徴と、当該語彙の音声環境による特徴を分析する方向である。
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