外国人学習者173名が日本語をキーボード入力する過程をビデオテープに記録して、音韻面から分析した結果、以下のような成果がえられた。 1 外国人学習者の在日歴と日本語キーボード誤入力率の間の相関関係はよわく、在日歴がながい学習者でも、基本的な語彙の音韻を正確におぼえていない。 2 来日前に3年以上主専攻として日本語を学習した者の誤入力率はひくいが、1〜2年程度学習した者の誤入力率と、未習の者の誤入力率の間に有意な差はない。 3 非漢字圏の学習者よりも漢字圏の学習者の方が誤入力率がたかい。漢字圏の学習者は音韻を正確におぼえないまま、意味理解をすすめているとおもわれる。 4 長母音と短母音の区別は、学習者の母語に関係なく誤入力率がたかい。これは、日本人の発話の音声的特徴にも原因があるとおもわれる。 5 破裂音の有声・無声の区別は、特定の母語話者の誤入力率がたかい。 6 摩擦音、破擦音は、学習者にとって、発音がむずかしいが、誤入力率はひくい。 分析の結果えられた、外国人が誤入力しやすい文字列を、パーソナルコンピュータの日本語変換システムに登録することによって、外国人学習者の日本語入力を支援できることがあきらかになった(外国人用漢字変換辞書)。外国人用漢字変換辞書には、基礎語彙7900語に対して、長母音と短母音の区別など、約10000の誤入力候補を登録した。完成した辞書はフロッピーディスクに収納して近日中に希望者に配布する予定である。 また、外国人学習者による日本語キーボード入力の過程を記録した、約100時間、67000字分のビデオテープは、今後、音韻以外の面からの誤用分析の素材となるであろう。
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