本研究は、日本語のリズムが音声的にはモーラの実現によるものではなく、リズムユニットという新たに設定された単位の時系列上での特徴的な配置により引き起こされる現象であるという仮説に基づいている。このような考え方に従い、中国語、米語、韓国語、スペイン語を母語とする日本語学習者の語レベルでの発音を、これまでの研究のようなモーラの「等時性」を追求するのではなく、リズムユニットの時間的な配置特徴として生成面から日本語話者の特徴と比較し考察した。資料語は3、4、5モーラ語62語で、紙に書かれた文字と絵(文字なし)を見て、「これは( )です」という文中に入れ、それぞれ3回ずつ発音してもらった。被験者は東京方言話者3名、北京方言話者6名、米語話者4名、韓国語話者6名、スペイン語話者1名の計20名である。分析は、語全体の持続時間と各リズムユニットの割合であるが、その割合は(各ユニットの持続時間)÷(全長持続時間)(%)を用い、各ユニットの平均と標準偏差を算出した。計測基準に基づいて分析した結果、日本語話者には以下の三点の時間配置の特徴が観察された。1)同じ音韻構成のユニットでも実測値、割合が異なること 2)音韻構成が異なればユニットの環境で実測値、割合が異なること 3)割合には一定の変動幅があることである。これに対して、学習者は日本語話者と異なるユニットの配置特徴を示した。特にユニット1の実現に特徴がみられたこと、韓国語話者の5モーラ語212型が特徴的であった。あと一点は、文字を読むのと絵をみて発話するのでは、全体長にすべての話者で有意差があったことと、実測値、割合ではアメリカ英語話者に有意差がみられたことである。
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