1 今年度の研究によって得られた新たな成果 迫田(1996)によると、教育機関に在籍する成人日本語学習者は、母語の違いにかかわらず、指示詞に関する学習困難点はソとアの使い分けであった。そこで、今年度の研究である迫田(1997)では、韓国語話者と中国語話者の日本語学習者を対象として、指示詞ソとアの使い分けが何に起因するのかを、名詞と結合するソ系指示詞(その・そんな・そういう)とア系指示詞(あの・あんな・ああいう)に関して明らかにした。調査の結果、母語の違いにかかわらず、指示詞ソとアの選択には、接続する名詞と関連性があり、「ソ系指示詞+抽象名詞」(例 その+場合、そんな+こと)、「ア系指示詞+具体名詞」(例 あの+先生、あんな+店)のパターンを形成していることが分かった。また、Sakoda (in press)は、格助詞ニとデの使い分けにも接続する名詞とのパターンを形成が観察されるのではないかという仮設をたて、母語の異なる成人日本語学習者を対象として調査を行った。その結果、「場所を表す名詞+格助詞デ」(例 東京+デ、寮+デ)、「位置を表す名詞+格助詞ニ」(例 中+ニ、上+ニ)のパターン形成が認められた。これらの結果から、成人日本語学習者が第二言語学習において、語と語をある組み合わせのまとまりを作るパターン形成の学習ストラテジーをとることが明らかになった。 2 今後の研究の展開および計画 今年度は、広島市内の保育園において日本人幼児(2歳〜4歳)約50人を対象に、対話によって一人30分程度の発話収集を行った。今後はそのデータを基に、談話に登場する指示詞コ・ソ・アの使用状況を分析し、上記のような第二言語学習者の学習ストラテジーが同様に観察されるかどうか、習得順序はどうかなどの観点から、第一言語と第二言語の習得傾向が類似しているのか、異なっているのかを明らかにする予定である。
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