研究概要 |
(1) 第一言語と第二言語の習得の違いに関する研究 平成9年度に行った幼児2〜4歳児の発話データの資料整理を行った。特に、文脈指示用法における使用状況のデータを収集し、第一言語と第二言語における指示詞コ・ソ・アの習得の類似点と相違点を分析研究した。研究成果は、来年度開催の国際応用言語学会大会(AILLA)において発表の予定である。 (2) 習得に影響する言語内環境に関する研究 指示詞のソとアの使い分けが、隣接する名詞句との関連でパターンを形成しているという指摘に基づいて、場所を表す格助詞の「に」と「で」の使い分けを調査し、同様にパターンを形成していることを示したSakoda(1997)の研究結果から、迫田(1998)はそれ自体あまり意味を持たない機能的な語は、前後に位置する語と共にひとかたまりで覚えられるという「固定化」の現象を明らかにした。そして、それが学習者の誤用を産み出すと考えた。この研究によって、第二言語習得研究の調査をする際の分類の視点を言語学的観点で行うのではなく、学習者の視点から行うことの必要性を指摘した(迫田1999a,b)。 (3) 今後の研究の展開 言語習得に影響を及ぼす要因として、言語内環境と言語外環境に分けて以下の調査研究を行う予定である。言語内環境に関する研究においては、上記(2)の発展として学習者の誤用を産み出すストラテジーの調査を行い、否定表現や格助詞「の」の習得状況を分析することによって新たな学習者のストラテジーを明らかにする。言語外環境に関する研究においては、日本で日本語を学習する場合(JSL)と外国で日本語を学習する場合(JFL)での習得の違いを日本語学習者への対話調査によって明らかにする。
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